今の病棟、ざっとこんな感じです。
ハイブリットオタクの本業は『オタク』と言いたいところなのですが、残念ながら私もちゃんと自分で稼いだお金でオタクやらせてもろてます。
フォロワーさんはご存知の方が多いかと思いますが、私の仕事は看護師です。今回は全くオタクと関係のないことを書こうかなと思います。
はじめに
コロナ禍で医療崩壊だのなんだの言われている現在、病院がどんなかんじなのか。
コロナの病床を支える医療現場の報道などはよく見ます。では今までの病棟はそのままでしょうか?
いいえ、コロナ対応が強化されるその裏で、通常病床はかなり頑張っています。
コロナの病床で働く方々はそれはもう私達とは比にならないほど精神的にも苦しいことでしょう。しかし、このようにコロナ対応を万全に行うために裏でも努力があることを、知って欲しい。
そして、看護学生さんへ。
コロナの影響で実習へ行けない看護学生さんがほとんどだと思います。授業やオリエンテーションで見せられる病院の姿はほんの一部で、そして綺麗に見せられているはずです。私がまだ現場を知らない時もそうでした。すこしショックを与えてしまう可能性もありますが、ただのそこらの看護師ブログだからこそ伝えられることもあるかと思いました。それにあくまでも私の職場の場合ですからね!いろんな病院がありますから、安心(?)してください。
新人教育のお手伝いを今年からさせていただいてますが、数年しか変わらないのに今の新人と私の年代とでは、実習で学んだこと、経験したことの違いはかなり大きいです。それが、今年の3年生は実習があまりできず、ほとんどが座学で得た知識で来年は現場に掘り込まれる……。正直、掘り込まれる側も迎える側も恐怖しかないです。そんなギャップを少しでも緩和できないかな…という思いもあり、今、パソコンに向かっています。
自己紹介
ではます私目線で書くので、自己紹介を
・看護師3年目(専門卒)
・一般病棟(呼吸器外科・内科 耳鼻科)
普段の病棟
コロナ禍の裏で……の話をする前に簡単に普段の病棟の話を。
(またどこかで詳しくお話しできたらしたいですね)
「看護師です」
と初めて会う人や久しぶりに会う友人に言うと
「じゃあ点滴したり採血したりするんだ〜!」
と言う返事がきます。そうです。点滴もするし採血します。
ざっくり看護師の仕事を説明すると
診療の補助と療養の世話になります。
上記内容は診療の補助ですね。そして私達は療養の世話も行います。食事や排泄の介助、お風呂をお手伝いしたり身の回りの環境を整えたり…そんなことをしながら患者の"観察"を行います。
これが介護度の高い患者や重症度の高い患者だとオムツの交換一つで一苦労だったりします。
体重140kgでほぼ寝たきりの患者さんの身体を女性看護師3人(夜勤だとこれが勤務している最大人数)でオムツ交換した時は本当に看護師って体力勝負だな…って思いました。
私の働く病棟のメイン科を紹介しましたが、1年の流れでいうと冬は呼吸器が多くて夏は耳鼻科が多い印象です。やはり風邪などで持病が増悪して再入院するケースがおおく「お久しぶりです」状態なわけです。なので年中では比較的夏は楽な時期だと思っていました。
コロナ対応の裏で…
さて本題に入ります。先程「比較的夏は楽」と言いましたが今年は例外です。
7-8月はどこもほぼ満床状態
まずコロナ第一派
ここで新規の手術患者さんがかなり減少しました。
「コロナ病床は大変そうだけど。おかげで(?)OPも減ったし。意外とうちは落ち着いてるな」
なんて安易な考えでいました。
この時点ではそこまで患者数が一気に増えることはなく、入退院の循環がうまく行っていたように感じます。
問題は第二波でした。
第一派の落ち着きをみて手術件数は通常通りに…いやむしろ減らしていた分を取り戻すように次々と増えました。例年、夏は内科が少ない分、外科(血管吻合などの大きなOPが増えるなど)の割合が多い印象でした。
「なんかいつものうちの夏って感じになってきたね」
先輩達がそんなことを言っていた矢先に奴は来ます。
コロナ第二波
急な感染者数の増加に、コロナ患者を受け入れる病床数は増えました。それも急な話で…
「今日の○時から、□□はコロナ患者しか受け入れないから。そのかわり呼吸器の患者は90%うちに転病棟してくるし、これからの入院もうちが受け入れます」
え?今日?今日の○時?○時って過ぎてるけど
まぁそうなるか…とは誰もが察していたけれど実際にそうなるとかなり大変な話で。呼吸器内科をメインにしている病棟はうちと□□病棟だけだったのでほとんどの患者がうちに来ることになりました。もちろんこれから□□病棟に入院する化学療法予定や予定手術・検査の患者さんもです。そして通常通りにうちに来る予定だった患者もきます。いわゆる病棟が丸々1つ閉鎖されたような感じ。
そうなると、もうわかりますよね、キャパオーバーなのは。例年の夏なら、満床だとしても自立した手術患者さんや化学療法の患者さんなどが多く、そこまで多忙なイメージはありませんでした。しかし、満床状態な上に現在はとてつもなく重症度が高く、要注意患者も多い…。
じゃあ重症度が高いってどういうこと?
そのまんま重症ということなのですが
・いつ亡くなってもおかしくない患者
・いつ急変してもおかしくない患者
・人工呼吸器などの機械を装着している患者
などのことを指します。
最後にでた「人工呼吸器などの機械を装着している患者」が病棟閉鎖に伴い、こちらに集結するんですね・・・
人工呼吸器と言ってもいろんな種類があって…
非侵襲的陽圧換気(NPPV)
侵襲的陽圧換気
Puritan Bennett™ 840 | Medtronic
があります。ざっくりとね。
わかりやすく言うと管を入れて(もしくは気管切開して)気道に直接侵襲を与えて換気するものと密着したマスクをつけて非侵襲的に換気をするものですね。
この手前にネーザルハイフロー(NHF)と言って普通の酸素マスクよりもたくさんの酸素が投与できる機械もあります。
Philips AIRVO 2 加温加湿器搭載型フロージェネレーター HCNOCTN514 の詳細を表示
先月、うちの病棟ではこの3台が揃った時がありました。
人工呼吸器が1人、NPPVが1人、NHFが3人・・・・ほんとうにこれ以上勘弁してくれ。
人工呼吸器をつけるに伴い鎮静薬を使うことがありますが、状態によってはあまり使えない人もいます。そうなれば命綱である人工呼吸器を容赦なく自分で外す患者さんも多く、私たちはアラームの音を耳に入れた瞬間、病棟の端から端までものすごいスピードで走ります。ほんとにひどい時は普通に歩くことなんてなくて走り回ってます・・・
じゃあ要注意ってどんな患者さん?
そのまんまかなり注意して見ておかないといけない人たちです。
例えば・・・
・目を離すとすぐに点滴などのライン類を自分で引っこ抜いてしまう。
・筋力が低下しているのにもかかわらず自分で歩き出そうとして転倒してしまう。
・独り言が多く、いやもはや叫び倒したりしており他の患者さんからのクレームが殺到。
・病棟から逃亡してしまう。
・スタッフへの暴言暴力やセクハラ行為。
などなど様々な「要注意」患者さんがいるわけです。
これらの患者さんを、先ほど説明した重症患者さんと同時に看護しなければなりません。もう体がいくつあっても足りないです。
そんな状況がこの1ヶ月続きました。
先輩が口を揃えていいます
「こんな夏初めてだわ」
これに加え、コロナ第一派では減らしていた予定手術が通常通り実施され始めました。遅れていた分、急ピッチで手術が詰め込まれます。もちろん、手術をせず放ておくと腫瘍は大きくなるかもしれないし、症状は悪化するかもしれない。そこをなんとか遅らせて頂いてたのだから、患者さんとしては早く手術してほしいんです。
うちは外科も入っているので手術日は多くて7件/日くらいの手術件数になります。手術をしたことある人はイメージがつきやすいかもしれませんが、入院して手術すると言うことは全身麻酔をかける、その後の管理が必要だと言うことです。その必要のない手術(眼科など)は日帰りでもできます。手術が終わると病棟に帰ってきて30分〜1時間おきに血圧を測る必要があるし、手術の後は何が起こるかわかりませんから、見落としがないようきっちりと観察する必要があります。上記のように、走り回るほど忙しい状況であっても…。術式によっては身体にたくさんチューブが入って帰ってきたり、安静が必要な患者さんもおり、そしてまたそれを守れない患者さんもいるので術後は結構大変なんです。
これから…
ようやく怒涛の9月が終わろうとしています。(って書いてるうちに10月になりましたね)うちは比較的にスタッフが充実している方ですし、応援に来てくれるスタッフもいてなんとか回ってきました。DPNSという看護提供方式をとっており2人1組のペアになり、平日の日勤帯の看護を行います。このペアが6〜7ペアくらいあるので、とても充実しているのですが、少ないところはこれを3〜4ペアで回しています。患者数は同じ(もしくはそれ以上で)
そして、季節の変わり目。最近は朝夕がかなり冷え込んできました。冒頭でお話ししたように、これから「おかえり」患者さんが増えるんです。体調を崩して持病が悪化して入院してくるケースですね。
そして予想されるインフルエンザ患者さん。新型コロナウイルスと同じ、インフルエンザウイルスでも人は死にます。
ここから余談です。
私が新人の時から担当していた患者さん。去年、インフルエンザのせいで亡くなってしまいました。もともとの呼吸器疾患が悪化し、追い討ちをかけるようにインフルエンザ罹患。そろそろ予防接種したいけど、うちの病院でするか、近所でしてもらうか…なんて話をしていた矢先でした。
「インフルエンザ陽性でました」
その翌日には先程説明させてもらったNPPVという人工呼吸器を装着しました。
自分の意思が伝えられない、機械の圧が苦しい、隔離されて1人の部屋、寂しい、苦しい。彼女はどんな思いで最期を過ごしたんでしょうか。私は何をしてあげれたんでしょうか。思い返すと今でも胸が苦しくなります。そして、あの時、迷わずにすぐに手配してうちで予防接種してもらっていたら……そう考えると悔しくて仕方がないです。彼女はお金や家族の問題も抱えておりそれが難く後回しになってしまっていたのですが、そういったことですぐに治療できない時の歯痒さもまた、こういった結末になると非常に悔しいです。
結局は、予防接種しっかりしてください。そして、「インフル+コロナ」この冬はヤバいぞ。って事です。
長々と書きましたが、もしフォロワーさんに看護学生がいて何かを感じてくれたり、同業者がいて共感してくださる方がいたりしたら嬉しいな…くらいの思いで書きました。逆に、入院経験者の方やご家族に入院されてる方がいるなど、このブログを読んで不快な思いをさせてしまった方がいたら申し訳ないです。私は決して患者さんが悪いなんて言いたいわけじゃありません。医療情勢にも、スタッフの質や療養環境など問題は別のところにあります。そしてそれが解消されても私たち看護師のモヤモヤは一生続くと思っています。そういう職だから。むしろそうでなければならないと思っています。私はまだまだ勉強不足ですが、もし需要があるならたまにオタク以外のブログも書こうかな…とか思っています。ご意見あればコメントください。最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
*1:初期、第二救急では対応が困難な重篤疾患や多発外傷に対する医療。救命救急センターや高度救命救急センター